不動産業全般の税金対策不動産事業、特に開発・売買では銀行融資が必須です。そうしますとスムーズな事業融資を受け続けるためには、一定額以上の経常利益を計上することが必要になるため、税金対策よりは赤字対策の方が優先度は高くなります。
とは言え必要以上に利益が出過ぎてしまうのも、痛しかゆしです。できればその資金を翌期以降までプールしたいと考えるのは経営者としては自然な成り行きです。そこで銀行に求められる程度の利益は確保しつつ多すぎる利益を圧縮する決算対策が必要になります。考えられる限りの税金対策をすることになります。
100万円単位以上で損金にできるものとしては下記のもの等が考えられます。
1.将来の退職金見合いの生命保険料年払い
2.経営セーフティー共済掛け金の年払い
3.高額な中古車両の購入
4.時期と金額が合えばレバレッジドリースの購入
5.決算賞与の支給
6.赤字不良物件の処分
消費税の個別対応方式消費税の課税売上割合が95%未満の場合、一括比例配分方式と個別対応方式からどちらかを選択して消費税申告をする必要があります。不動産業で売買をしている場合には、非課税売上に該当する土地売上が多額に発生しますから、通常は課税売上割合が95%未満の場合に当たり、一括比例配分方式か個別対応方式を選択して消費税申告することになります。
消費税の計算にあたっては、何等かの決算対策により消費税を圧縮するということは無理です。消費税に関して注意すべきことは、消費税の納付が決算期末に予想外に起こりますと、資金繰りが厳しくなるということです。通常消費税の納付額は、会計処理方法に関わらずに決まりますから毎月もし今決算を迎えたらいくら消費税を納付しなければならないかが判明しています。しかし不動産業に多い個別対応方式を採用している場合には、最終的な課税売上割合に左右されるために、期末近くの売上が上がるかどうかで大幅に変動することば少なくありません。
従って事前に消費税額を予想していても最終的に大幅に変わるリスクを想定しながら決算準備をする難しさがあります。
なおこの個別対応方式を採用している場合には、消費税だけでなく、控除対象外消費税という特殊な費用も決算時に突如現れますので、利益を確保したい業績状況の場合特に神経をすり減らすことになります。
土地・建物区分の問題売買を行っている場合、仕入れた物件の土地と建物を区分する問題があります。購入時の売買契約書上に消費税額が明記されていれば、消費税額より建物の価額が算定されて、残りが土地の価額となります。しかし売買契約書上に消費税額が明記されていなければ、何等かの合理的な方法で土地と建物の価額を区分しなければなりません。
この合理的な区分方法としてはいくつかの方法が考えられます。
固定資産税評価の土地建物比率で購入額を分けるのが、一番標準的です。しかしそもそも固定資産税評価額自体が一般の取引価額とかい離していますので、例えば土地の固定資産税評価額を0.7割返して実勢価額ベースにして土地価額とし、残りを建物価額にする等考えられる方法のうち最も通常の取引価額に違い感覚の方法を選択することが一般的です。
よほど極端に租税回避の意図が推定されない限り、税務調査で問題になることはありませんが、物件ごとに様々な方法で算定するよりは、できるだけ統一した方法で算定し、特定の場合にのみ理由づけしたうえで他の方法を選択するというのが間違いないことになります。
建売・デベロッパーの経理・税務土地の開発・分譲では、仕入れた土地や建物の原価を個別原価計算方式により区画ごと売却物件ごとに積み上げて管理しておくことが必要になります。この原価をA区画からB区画にとか、A物件からC物件にいくらか原価を横移動すると、正しい利益が算定できず、税金も誤った計算になってきます。
同一年度にすべて売却していれば税務上は問題が生じませんが、決算期をまたいで一部が在庫になる場合、在庫金額が適正化否かは厳しく問われることになりますので、税務調査でも十分に説明できる準備が必要になります。